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あるフェラーリののろい

356bb

しっかし『ヒトが悪いもんだなあ~』とつくづく思ったのは先週、中国自動車道で起こったフェラーリを主体としたスーパーカー同士の多重事故であった。

どの報道を見聞しても、『1台お値段2~3千万円』とか『総額8000万円の事故』とかの見出しである。
共通しているのはどれも、含み笑いを殺しながら『(内心やった~ とか)』原稿を書いているんだろうなあ、と思わせる活字の行列と現場レポートばかりにしかお目にかからなかった。

ウェット路面で、ああした広いレーシングタイプまがいのパターンの、ワイドタイヤとのマッチング…となると相性が悪く、特に爆発的パンチ力のあるリアタイヤの回転がプラスとなったら、すぐにケツを振ってしまったわけなのだろう。おそらくは『これがポルシェ』だとしたら、時速150キロで下手な運転だったとしても事故らずに何事もなかったのではないか。

しかし、ここのクラスくらいの高級車ともなると、事故って自車の修理代までカバーできる特約の「『車両保険』が1年100万以上」だなんて、考えられないではないか。まるで家賃だもの。
だが、片側フェンダーミラーのアッシー一式でも30万はする現実を前にしたら、保険屋もいい顔をしていられないだろう…。 
近所の幼なじみが、そのフェラーリでも(当時)最上級最高速のフェラーリ365BBをなんと買っちゃったのである…(とっておき笑い話へと続く)。
ビックリした。このスーパーカーブームの火付け役となったマンガの漫画家の愛車というから、プレミアものなのはまちがいない。

ところが、近所でいっつも顔を合わせているのにそんな大それた事をした場合、内緒にしておくのが常道らしい。
長い間ボクは知らなくて、二台目フェラーリの308だかを追加で買った際に別人から聞かされて唖然としたものだった。
とにかく彼ら兄弟は駐車場は離れた場所へと移るし、さらにゲンブツを近所や横丁では走らせないのだからちっとも知らなかったワケである。

やっぱり税務署の目や、ねたみなどを恐れるようになるのだろう、人間、持てる者は守りに入るという、展開的メカニズムなんだなあ。
そうかあ…やっぱ、ボクは買うのをやめよう(笑)

或る日、そいつの奥さんがやってきての茶飲み噺し。

面白いことに、それら手持ちのフェラーリ軍団は車体カバーをかけたまま「めったに乗らず、駐車場のコヤシ』になっているそうで、毎日の仕事や家事には『もっぱら軽のバン」を足としている家庭だ』そうなのだ。

それが、ある日小学生低学年の息子さんをバンに乗せて二人、奥さんは湘南海岸のドライブへと走った。
ここのパパはファミリードライブは好きではないのである。

帰路、海岸べりでガソリンが心細くなってきたのに気付き、行った先でGSで給油とあいなった。

車を降りた二人だったが、GSの事務所で休んでいると息子が突然壁を指差した。
『あ!ウチのクルマがあった』
見れば石油会社のポスターが美女とともに真っ赤なフェラーリ…という、有りがちな構成で作られたポスターが貼られている。
『お母さん、ホラッうちのクルマだよ!』
そういえば亭主がいつだったか、そうした企業の宣伝ポスターへと愛車をモデル出演させて「貸し出しギャラ」を受け取っていたので、いいクルマを持つとそうしたご利益があるものなのか、と気にも留めなかったがどうやらどこか目に憶えのある赤いクルマがそこに映っているではないか。

それをわあい、わあいと喜ぶ児童を前に目を細める母というシチュエイションのなか、気付いてみたらどうもスタンドの店員の態度がおかしいのに母の注意心は気が付いた。

たしかに、ガラスの外側に停車しているこの母子の乗ってきた車と、誰しもが比較してしまう。
ベージュの360CCあたりのコ汚いバン、まるで薄汚い名刺の箱を横に立てたようなフォルムである。

このガキはあろう事か、そうした「おもちゃ車」とポスター中の『365ベルリネッタボクサー(=BB)』、世界最速と謳われた歴史的名車とを『ウチんちは併せ持っている』と主張しているわけである(笑 口絵写真参照)
ちなみに、この社名の356について、当時のニキ・ラウダ氏が操って本当に時速365キロを叩き出したというエピソードもある。

『だってこれホントにウチのクルマなんだよ~』という声がした。
おそらくは、児童の目からしてもスタンドの連中が
『へぇ~そう、スッゴいんだね』などと息子の主張などツメの垢ほども信用せず、空廻しで聞き流しているのがもどかしかったのだろう。
『(何をたわけたことをヌカしているんだ、このバ~カ)』
などと心の中で繰り返しているに違いないのだ。

こうした場合、意地になった男の子は絶対にゆずらないものである。
解決策は説得ではなくひっぱたくほかはない(笑)

お母さんにしろ
『ホントなんですよ』とは言ってみたものの、先方が受け入れるわけもない。
つまり裁判でいえば、
『状況証拠的に不利』ばかりでなく、そこに停めている車という『物的証拠のゲンブツ』(笑)がさらにこの母子をえん罪へと追い込んでしまったのでった。

考えてみれば、ボクだって絶対に信用しないだろう。
此の児童をじっと見詰めて、おそらくは
『そんなウソをつかなくてもいいんだよ。もっとラクに生きなさい』とでも生活指導しちゃったことだろう(笑)。

お母さんと、正義を主張して最後まで戦い抜いた児童は、全面敗北に打ちひしがれて、心はぽっかり口を開けたままだ。

会計を済ませ、振り向いて冷ややかな視線を再確認する恐れを抱きながら、軽バンのブリキみたいなドアを閉めて帰路についた。花火みたいに真っ白な排気ガスをすっ飛ばしながら。

ともあれ先述の車両保険じゃあないが、オーナーはオーナーなりにこうした苦労まで強いられるものなのか。
それにしても、あの報道はひどかった。

カメラは被害車輌ドライバーのなるべくガッカリしている表情を追っているのがミエミエだったし、できれば、どういうお方がどういう方法で買ったものなのか経緯まで追っている週刊誌まであった。

それらはすべて、あの事故を『唯金主義』だけで処理しており、被害額を羅列してビックリして見せるなんて、考えてみたら[開運!なんでも鑑定団]みたいなものではないか(笑)

金額だけで、何がそんなに面白いのか報道者らのセンスを疑う。
見識をいうならば、そこら辺の豪華なトラックの方がよっぽど高い価格ではないか。
バスにいたっては5千万クラスなどザラどいうのが実情である。

それが事故ってハナがつぶれたって、全損多重事故だって、高速道路から半落ち状態になったって、その被害車輌価格を論じる者などあっただろうか。
せめて庶民の好きモンといった程度でしかない上昇志向。

それが夢と消えた残骸を見せて、ことさらに彼らの”片寄った趣味志向”をチクチクして何の社会正義か。
結局は書き手・報じ手自身のショボさを、自らが嘲ってしまっている記事となっているのを気付かない想像力の貧困さをボクらは笑ったほうがよい。

そもそも、あれを報ずるならば、それら事故車輌の壊れ方を差して、
『さすがにレーシングカーの作りだけあって、これだけの破壊がありながら、負傷者がなかったのはさすがのテクノロジーと、モノ作りを讃えるべきであり、安全対策にはこうしてカネがかかっている証拠』くらい言ってみても罰は当たらなかっただろうに。

世の中、カネばかりじゃないよ!
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プロフィール

前頭前野 重雄

Author:前頭前野 重雄
前野 重雄:東京下町生まれ&育ち。(有)流体力学・旭堂代表。

70年代以前は中学3年から週刊誌での報道取材記者、70年代初頭HAWAII移住7年。中盤からムービーカメラを回す。帰国後はライター。第1回週刊少年ジャンプ小説ノンフィクション大賞1席入選。
その後[なんでも鑑定団][うたばん][週間えみ~SHOW]で鑑定士として長期出演。雑誌連載多数。警視庁捜査一課特殊犯SIT部隊防弾装備を設計制作。単行本に「球界遺産」「客は幾万 来なくとも」など。GREE公式ケータイにブログ

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